早期再分極と早期再分極症候群(J波症候群)の違いとは?

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早期再分極と早期再分極症候群(J波症候群)の違いとは?

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早期再分極とは

心電図

早期再分極とは健常人でQRS後のST部が1~2mm以上の上昇を認める波形変化のことをいいます。

心筋梗塞との鑑別方法として12誘導心電図で広域でST上昇を認め、冠動脈支配領域に一致しない場合はST上昇がみられても早期再分極を疑います。

早期再分極は若い男性や運動家に多くみられる所見で、自覚症状はなく病的意義は乏しい所見と考えられています。

早期再分極と不整脈の関係性について

1)ブルガダ症候群

1992年にブルガダなどが早期再分極において、右側部胸部誘導でのST上昇を有する例では心室細動を生じるリスクがある例を報告し、現在ではブルガダ症候群として分類され広く認知されています。

ブルガダ症候群とは?

2)早期再分極症候群(J波症候群)

1993年に相澤らが特発性心室細動例で下壁誘導のJ波増大と心室細動発生が関連することを示しました。その後2008年にハイザケルらがブルガダ波形を示さない特発性心室細動例の31%に早期再分極を伴うことを報告。

2010年にはアントロビッチらがこれらの特発性心室細動をJ波症候群として1つの疾患概念としてまとめました。

早期再分極症候群(J波症候群)とは?

1)定義

早期再分極症候群とは12誘導心電図でⅡ、Ⅲ、aVF(下壁誘導)Ⅰ、aVL、V4~V6(側壁誘導)のうち、2誘導以上で1mm以上のJ波増高とそれに続くST上昇を認めた場合をいいます。

2)疫学

欧米の報告では男性に多く、1mm以上のJ波増高が全人口の3~6%、2mmを超えるJ波増高が0.6%認められるといわれています。

このうちⅡ、Ⅲ、aVF(下壁梗塞)の早期再分極が不整脈による突然死に関連するといわれており、年間の不整脈死亡率は0.8%前後と報告されています。

3)原因

J波の機序は現時点では不明となっています。

4)症状

一部の例では心室細動(VF)、多形成心室頻拍により突然死するという報告があります。

5)治療

心室細動(VF)の発症例ではICD植え込みの検討が必要になります。また心室細動(VF)予防にキニジンが有効だという報告があります。

早期再分極症候群(J波症候群) 波形のポイント

心電図の画像
画像引用:https://phio.panasonic.co.jp/kinen/ecg/case/case23.html
  1. Ⅱ、Ⅲ、aVF(下壁誘導)とⅠ、aVL、V4~V6(側壁誘導)のうち、2誘導以上で1mm以上のJ波増高とそれに続くST上昇を認める

J波が起こるメカニズム

J波は心筋の収縮が関係しています。J波が起こるメカニズムを理解するために、まずは正常な心筋の収縮を理解する必要があります。

正常な心筋の収縮について

①心筋の収縮の向き

心臓のイラスト

上の図は心筋の一部を拡大しています。

拡大すると心筋は心内膜心外膜の2層に分かれているのがわかりますが、収縮の際に心内膜では外側に向かって収縮し、心外膜は内側に向かって収縮し血液を送っています。

②心筋の収縮を活動電位で表した時の違い

心臓のイラスト

心内膜の活動電位は一般的な1相~4相の形となっていますが、心外膜では心内膜に比べて活動の持続時間が短い1相の後に小さいノッチを認めるという2つの特徴があります。

活動電位については別の記事で詳しく解説しています。

③活動電位と心電図の関係性

心臓のイラスト

心電図では向かってくる電気刺激をプラス、離れていく電気刺激をマイナスで表しています。上記の角度から心筋を見た場合、向かってくる心内膜はプラス、離れていく心外膜はマイナスとして心電図に表れます。

心電図のイラスト

心電図では心内膜と心外膜の電気刺激を足した状態で優位になっている電子が表れます

厳密にいうとQRS波の後にJ波は出現していますが、正常な人の場合J波の高さは1㎜以下のため確認することができません

早期再分極の心筋の収縮について

心臓のイラスト

早期再分極の心外膜の活動電位ではノッチが深くなるという特徴があります。

そのため正常な心筋の収縮ではわずかにプラスの電子が優位になっているため、心電図上ではJ波を確認することができませんでしたが、早期再分極の場合はプラスの電子がより強く表れるため心電図上でJ波を確認することができるようになります。

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