プラトー相とは?|活動電位でみる心臓収縮のメカニズムを解説
心筋細胞の細胞膜には電気的な活動が起こっており、これが心臓を規則正しく収縮される働きをしています。この現象は活動電位によって引き起こされています。
この記事では活動電位と心臓収縮のメカニズムについてわかりやすく解説していきます。
活動電位とは?
細胞膜の内外には電解質(イオン)が不均一に分布しており、細胞膜の内側ではK̟⁺の濃度が高く、細胞膜の外側にはNa⁺の濃度が高くなっています。
一般に細胞の興奮は細胞膜のイオン透過性の変化(細胞内外のイオンの働き)としてあらわれ、これが電気現象として観察できます。この興奮に際してみられる一連の電気変化を活動電位といいます。
また細胞膜が興奮していない時の膜電位を静止電位といいます。心筋細胞における静止電位は-90mvでマイナス電位となっています。
心筋の興奮に関与する代表的な陽イオンとしてK⁺(カリウムイオン)、Na⁺(ナトリウムイオン)、Ca⁺⁺(カルシウムイオン)があり、これらの陽イオンが細胞膜を通過することで細胞内電位が変化していきます。
活動電位でみる心臓の収縮
心筋細胞で行われている活動電位の活動は心臓の収縮と拡張に大きく関係しています。
心臓の収縮‐拡張は心電図にはQRS波‐T波として現れます。
そのため活動電位の過程で異常がある場合は心電図上にも波形変化が生じます。
心筋細胞の電位変化
心筋細胞では脱分極と再分極のサイクルにより電位変化が発生することで、心臓は収縮と拡張を繰り返しています。この心臓が収縮するために電位変化が生じることを活動電位といいます。
活動電位は心筋細胞が脱分極と再分極を繰り返す過程で第0相から第4相の5段階に分かれています。
- 第0相:脱分極相(立ち上がり相)
- 第1相:スパイク
- 第2相:プラトー相
- 第3相:再分極相
- 第4相:静止電位
第0相:脱分極相(立ち上がり相)
心筋細胞内は静止状態で-90mVですが興奮により、その電位がプラスに向かい0mVになると細胞内で様々な活動が行われ心臓が収縮します。
この細胞内がマイナス、細胞外がプラスに分極していたのが0mVになって分極から脱する一連の電気変化を脱分極といいます。脱分極することで心筋細胞はスイッチが入り興奮状態となり、静止から活動状態に変化して筋肉の収縮が起こります。
第0相:脱分極相では実際に細胞内でマイナスをプラスに転じていくために、陽イオンであるNa⁺(ナトリウムイオン)を細胞外から細胞内に取り入れています。この時に普段は細胞内に入れないNa⁺のためにナトリウムチャネルという入り口が開かれます。
第1相:スパイク
ナトリウムチャネルは第0相:脱分極相で短時間だけ開き、細胞内にナトリウムを急速に取り入れましたが、第1相:スパイクではナトリウムチャネルを閉じることで大量のナトリウムを細胞内に閉じ込めます。
第2相:プラトー相
第1相:スパイクでナトリウムチャネルを閉じたことで、細胞内に陽イオンであるナトリウムの流入が止まりました。しかし、このままでは活動状態がすぐに終了するので、次に筋収縮に重要な役割を果たすカルシウムを細胞内に取り入れる必要があります。
第2相:プラトー相ではカルシウムを取り入れるためにカルシウムチャネルと呼ばれるカルシウムのみ通す入り口を開きます。カルシウムチャネルはナトリウムチャネルが閉じた後に開き、すぐには閉じずにゆっくり開くことで活動状態(脱分極)を維持する働きがあります。
第3相:再分極相
第3相:再分極相では静止状態に戻るために素早く細胞内をマイナスに戻す必要があります。
細胞内をマイナスに戻すためには陽イオンの性質をもったイオンに細胞外へ出て行ってもらう必要がありますが、ナトリウムもカリウムも細胞内に流入している状態であるため細胞内外であまり濃度の差がありません。
そこで第3相:再分極相では細胞外の濃度は薄く、細胞内の濃度が濃いカリウム(K⁺)が排出されます。このカリウムの出口をカリウムチャネルといいます。カリウム(陽イオン)を細胞外へ急速に排出することで細胞内はマイナスに戻って静止状態に回復します。
カリウム(陽イオン)を細胞外へ排出したことで再び細胞内外に電位差ができて、再び分極することが可能になるこの回復過程を再分極といいます。
第4相:静止電位
第4相:静止電位では細胞内は-90mvとなり活動電位の働きはなく安定状態(OFF)となります。
そして再び第0相:脱分極相により脱分極することで心筋細胞はスイッチが入り興奮状態となり、静止から活動状態に変化するこの一連のサイクルを繰り返すことで心臓は収縮しています。
高カリウム血症でテント状T波になるメカニズム
T波は心臓が拡張する際の動きをあらわしています。活動電位でみるとT波は第3相:再分極相の部分に該当します。第3相の角度が急であればあるほど再分極の時間が短くなるためT波は鋭くなり、逆に第3相の角度が緩やかなほど再分極の時間が長くなるためT波は平低化します。
高カリウム血症の場合、第3相:再分極相においてカリウムチャネルが通常よりも早く、大きく開きます。そのため急速にマイナスへ傾くため第3相の角度が急になります。それによりT波の形も鋭くなりテント状T波として波形にあらわれます。
反対に低カリウム血症の場合はマイナスへ傾くまで時間がかかるため第3相の角度は緩やかになり、T波は平低化します。
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