心電図の基礎知識|P波、QRS波、T波ってなに?
バイタルサインをモニタリングする目的は急変を防ぐために、兆候をできるだけ早期に発見することにあります。このサイトでは心電図の役割は危険な不整脈の早期発見や診断、不整脈に対する治療効果の観察などがあります。ここでは心電図とはなにか?わかりやすく解説していきます。
心電図とは?
心電図とは心筋が収縮する時に発生するわずかな電気エネルギーの変化を記録したもので、1900年頃にオランダの生理学者ウィレム・アイントホーフェンによって発明されました。波形の変化から心臓の状態や活動を推測することができます。痛みもなく、身体への負担が少ないため不整脈や心疾患の診断に活用されています。
心電図で診断が可能な疾患
- 不整脈と伝導障害
- 心筋の虚血障害
- 心房・心室の肥大
- 電解質異常
電気刺激の流れと心臓の収縮の関係性
心臓が収縮する時に発生するわずかな電気エネルギーは洞房結節から生まれます。洞房結節で生じた電気エネルギーは洞結節→心房→房室結節→心室(ヒス束→脚→プルキンエ線維)の順で流れていき、この電気の流れを表したのがP波、QRS波、T波として心電図に現れます。P波、QRS波、T波はそれぞれ心臓の動きを反映している波になります。
電気信号の流れとP波、QRS波、T波の関係性
- 洞結節で電気刺激が生まれる(興奮が小さいため心電図には現れない)
- P波:洞房結節で発生した電気刺激が心房の心筋に伝わる
- PQ時間:房室結節に電気刺激が伝わる
- QRS波:心室に電気が伝わり心筋が収縮する
- T波:電気刺激が一時的に途絶えて心臓が弛緩する
- U波:心臓が静止状態に戻る
正常な心電図とは?
正常な心電図とはP波、QRS波、T波、が規則正しく現れ、一定のリズムで繰り返されている状態で正常洞調律といいます(現場ではsinus:サイナスと呼ばれていることもあり)。
新人看護師の方は特にこの正常洞調律をしっかり覚えておくことをオススメします。正常洞調律以外の心電図波形は全て不整脈(異常波形)になります。正常と異常の判断ができるとできないでは大違いです。
正常洞調律の波形のポイント
- P波、QRS波、T波が規則正しい
- PP間隔が一定リズム
- RR間隔が一定リズム
- PP間隔とRR間隔が一緒(PP間隔=RR間隔)
※心電図の読み方に関しては別のページで詳しく書いています。
「心電図の読み方とは?新人看護師にわかりやすく解説!」のページを参照してみてください。
異常な波形!新人看護師も覚えておきたい不整脈とは?
①心房細動(AF)…4人に1人に出現する不整脈、高齢者に多い
②心房期外収縮(PAC)…危険度は低いが場合によっては治療が必要になる不整脈
③心室期外収縮(PVC)…危険度は低いが場合によっては治療が必要になる不整脈
④心室頻拍(VT)…致死的不整脈
⑤心室細動(VF)…致死的不整脈
モニター心電図と12誘導心電図の違い
医療現場でよく利用される心電図には モニター心電図 と12誘導心電図がありますが、目的によって使い分けられています。
モニター心電図とは?
モニター心電図はモニター画面上に心電図波形を表示することができるため、バイタルサインや不整脈などの継続的な観察が行える心電図です。そのため循環器だけではなく、あらゆる診療部門で多く使われています。
< モニター心電図が必要な主なケース>
- 循環器疾患、絶対安静など急変リスクがある患者
- 不整脈の診断を受けて経過観察が必要な患者
- ICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)などで治療中の重症患者
- 終末期の患者
- 不整脈を誘発するリスクがある手術中や検査中の患者
モニター心電図のメリット
- 簡単に利用できて、長時間の観察が可能
- 異常な波形が出現したらアラームがなる
- 患者から離れた場所でも観察できる
- 履歴からさかのぼり必要な部分を記録用紙に残すことができる
モニター心電図のデメリット
- Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導でしか観察できないため情報量が少ない
- 患者の体動に合わせてアーチファクトが出やすい
- 長時間電極を張っているため皮膚トラブルが起きやすい
モニター心電図の電極の張り方
ここではモニター心電図で一番多く用いられる3点誘導について紹介します。3点誘導はⅠ誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導で心電図を観察することができますが、一般的にはP波、QRS波、T波がきれいに表示されるⅡ誘導で観察している場合が多いです。電極の張り方は
(あ)赤い電極…右鎖骨下
(き)黄色い電極…左鎖骨下
(み)緑色の電極…左季肋部
に張るのが一般的です。張り方の覚え方は頭文字をとって「あきみちゃん」と覚えます。
モニター心電図の電極の張り方のポイント
- 赤い電極と緑色の電極で心臓を挟む
- P波とR波がきれいに見える場所に張る
- なるべく骨の上に張る(体動時のアーチファクトが少ない)
- 皮膚の汚れをとる(電極と皮膚の接触不良を減らす)
12誘導心電図とは?
12誘導心電図は不整脈の診断や心臓の障害部位の診断を行う際に使用します。そのためモニター心電図で異常な波形を見つけた場合は、12誘導心電図を実施して医師に報告することが求められます。救急部門や急変時など一刻を争う場面では患者に苦痛を与えず、短時間で心臓に関する情報を得ることができるため多く使用される検査です。
12誘導心電図のメリット
- モニター心電図と比較して情報量が多いため不整脈や病気の診断として使用できる。
12誘導心電図のデメリット
- 異常な波形が出てもアラームが鳴らないため読解力が必要
- 検査は10秒程度で終了するが、その間の心電図しか記録できない
12誘導心電図の電極の張り方
12誘導心電図は四肢誘導と胸部誘導に分かれています。張り方の覚え方は頭文字をとって四肢誘導は「あきくみこ」。胸部誘導は「あきみちゃんのパンツ黒紫」と覚えます。
四肢誘導の張り方
(あ)赤色の電極…右腕
(き)黄色の電極…左腕
(く)黒色の電極…右足
(み)緑色の電極…左足
胸部誘導の張り方
(あ) 赤色の電極(V1)…第4肋間胸骨左縁
(き) 黄色の電極(V2)…第4肋間胸骨右縁
(み) 緑色の電極(V3)…V2 とV3 の中間
(ちゃ)茶色の電極(V4)…第5肋間と左鎖骨中線の交点
(黒) 黒色の電極(V5)…V4と同じ高さで前腋窩線との交点
(紫) 紫色の電極(V6)…V4 と同じ高さで中腋窩線との交点
※心電図の読み方に関しては別のページで詳しく書いています。
「心電図の読み方とは?新人看護師にわかりやすく解説!」のページを参照してみてください
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