S1Q3T3とは?|肺血栓塞栓症が疑われる心電図
肺血栓塞栓症とは心臓から肺に血液を送り出す血管に血栓が詰まってしまい、重症な場合は突然死につながる危険な疾患で、肺血栓塞栓症が起きた場合は心電図でも特徴的な波形変化が認められます。
この記事では肺血栓塞栓症にみられる心電図波形変化から症状、治療法について解説していきます。
肺血栓塞栓症とは?
肺血栓塞栓症とは体内で形成された血栓が(多くは下肢静脈で形成)、右心系を経て肺動脈に到達し血管を閉塞してしまう疾患です。
一般的にエコノミークラス症候群と呼ばれている疾患になります。太い血管が詰まった際は突然死の原因となる場合があります。
肺血栓塞栓症の症状
- 突然の息切れ
- 胸痛
- 背部痛
- 冷や汗
- 動悸
- 意識消失
- 心停止
肺血栓塞栓症の波形のポイント
- S1Q3T3
- 頻脈
- 不完全右脚ブロック
- 右軸偏位
なぜ頻脈や不完全右脚ブロックの波形変化が現れるのか?
肺血栓塞栓症では低酸素や低血圧、呼吸困難によって頻脈になります。
不完全右脚ブロックになる理由としては右室の急性負荷による影響を受けて波形変化が現れます。ただし伝導系の障害はないため完全右脚ブロックにはなりません。
右軸偏位になるのも右室の急性負荷による影響だと言われています。急性肺塞栓などの急性肺疾患や肺気腫など慢性肺疾患の患者でしばしば認められる心電図所見です。
S1Q3T3とは?
S1Q3T3とは急性肺血栓塞栓症を示唆する心電図変化です。厳密には肺血栓塞栓症で二次的に起きた右房負荷を反映していると言われています。
ただし感度は8.7%、特異度97.8%という研究結果もあり、S1Q3T3の心電図波形がみられても肺血栓塞栓症の確定診断には至りません。さらにはS1Q3T3波形は出現してから24時間程度で消失するという報告もあります。
S1Q3T3の波形のポイント
- Ⅰ誘導の深いS波
- Ⅲ誘導の深いQ波
- Ⅲ誘導の陰性T波
肺血栓塞栓症の治療について
1、抗凝固療法
肺血栓塞栓症の治療は抗凝固薬の内服が中心で行われます。原則的に入院での治療が必要になり、軽症の人は1週間以内での退院となります。
抗凝固薬の内服は退院後も継続され約3カ月使用されることが多いです。ただし、重症な血栓症や血栓ができた原因がはっきりしない人は3カ月以上の長期入院となります。
2、血栓溶解療法
上記の抗凝固療法で内服した抗凝固薬は血液をサラサラにしてさらに血栓が形成されないようにするもので、すでに形成された血栓をすぐに溶かす作用はありません。
血栓溶解療法はすでに形成された血栓を速やかに溶かす治療方法です。
3、カテーテル治療
カテーテル治療とは血栓溶解療法で十分な治療の効果を得ることができない場合や、出血のリスクがあり血栓溶解療法を導入できない場合にカテーテル治療で物理的に血栓を回収する方法です。
しかし、身体的侵襲が大きい治療になるため抗凝固療法や血栓溶解法が優先されます。
4、下大静脈フィルター
下大静脈は脚や骨盤内に流れる静脈が合流して心臓へ還っていく太い血管です。血栓は主に下肢で形成されるため、この下大静脈を通過することになります。
そこで血栓が通過できないようにフィルターを下大静脈に留置する治療方法になります。
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