心電図の基礎知識|QRS波の高さで何がわかる?
QRS波は心室の興奮を表しています。心室(特に左心室)は全身に血液を送り出すために厚い心筋で覆われています。心電図上でQRS波の波高が大きいのはこの心筋が作り出す電気エネルギーが強いためです。
このサイトでは心電図上で現れるQRS波の高さで何がわかるのか?わかりやすく解説していきます。
①QRS波が低い場合
低電位とは
低電位とは心室の収縮の勢いが低下したときに表れる波形です。QRS波の大部分は左心室由来のため、この場合左心室が機能不全により収縮が弱くなっている状態が多いです。
また肥満、気胸、多量の胸水や心嚢水が貯留することで心臓が胸壁から離れたり、心臓と胸壁の間に電気を通しにくいものがある場合なども低電位となる場合があります。
低電位の波形のポイント
- すべての肢誘導でQRS波の振幅の上下の和が5㎜未満の場合(肢誘導低電位)
- すべての胸部誘導でQRS波の振幅の上下の和が10㎜未満の場合(胸部誘導低電位)
R波増高不良とは
本来であれば12誘導心電図を実施した際にR波はV1から高さを徐々に増していき、V4もしくはV5で最大となります。しかし、R波増高不良では12誘導心電図を実施した際にV1~V3でR波が大きくならないのが特徴です。
胸部誘導のR波は右室筋と左室の前壁中隔の電位を反映しているため、V1~V3でR波増高不良が認められる場合は左室前壁中隔になんらかの障害が発生していると考えられます。さらに障害の程度によってはV1からV3に向かってR波が徐々に低くなる場合もあります。
その他の原因としてやせた人や肺が膨らんでいる人(肺気腫、COPDなど)は心臓が横隔膜に引っ張られて、心臓の軸が右軸に傾いていることが原因でR波増高不良となる場合があります。
R波増高不良の波形のポイント
- V1~V3でR波が低い
②QRS波が高い場合
左室肥大とは
左室肥大とは文字通り左室が肥大している状態をさします。肥大する原因として高血圧や大動脈弁狭窄症などにより圧負荷が左室にかかる場合や、心アミローイドシスなどの代謝障害で起こる場合などがあります。
心電図上では左室が分厚くなっているため左側に向かう電気信号の量が増えます。そのためV5 、V6でR波の高さが高くなります(左室高電位)。
また左室の壁が分厚くなるため電気信号の通過時間もわずかに延長します。それに伴いQRS波の幅もわずかに延長します。
左室肥大の波形のポイント
- V5あるいはV6のR波増高(左室高電位)
- V1、V2の深いS波
- V5、V6にST-Tのストレイン型変化を認める
- V1、V2のST上昇
右室肥大とは
右室肥大とは文字通り右室が肥大している状態です。右室は薄い筋肉で覆われており血液を送り出す先は肺だけのため、本来は左室と違って圧が低くなっています。
しかし、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などで血液が右室に沢山入ってくる容量負荷、肺動脈狭窄、肺高血圧症、あるいは僧房弁狭窄症などで左房から肺静脈を通じて右室に圧負荷がかかっても右室肥大が起こります。
心電図上ではV1、V2のR波が高くなるのが特徴です。またV5、V6で右室興奮を表しているのがS波になるためV5、V6ではS波が深くなります。
右室肥大の波形のポイント
- V1あるいはV2のR波増高(右室高電位)
- V5、V6の深いS波
- V1、V2のST-Tのストレイン型変化
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