低カリウム血症に対してMg(マグネシウム)を補充する理由とは?

低カリウム血症に対してMg(マグネシウム)を補充する理由とは?

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マグネシウムの生理学

マグネシウムは食事で約300g/日摂取され、その半分を体内に吸収しています。排泄は腎臓から行われ150m/日程度行われていると言われ、体内マグネシウムは腎臓からの排泄の増減により調整されています。

入院患者の約11%、ICU患者の約60%が低マグネシウム血症状態にあると言われています。しかし、採血データ上には反映されないことがあり、血中マグネシウムが正常であっても体内マグネシウムが欠乏していることがあります。

そのため血性マグネシウムが欠乏しているときは重度のマグネシウム欠乏が示唆されます。

採血データにマグネシウムが反映されない理由は?

マグネシウムは体内に約25g存在していますが、その半分が骨に、約45%が軟部組織に存在し細胞外液には約1%が存在しています。そのため血性マグネシウムは必ずしも体内マグネシウムを反映しているわけではないといえます。

マグネシウム欠乏の原因

1、マグネシウム摂食不良、吸収障害
→栄養不足、経管栄養患者、アルコール依存症、PPI(プロトポンプ阻害薬)の長期内服

2、マグネシウムの喪失
慢性下痢
→熱傷
→マラソンなどの運動後
→腎臓血流量の増加:糖尿病、多尿
→再吸収障害:利尿薬、細胞外液負荷、高カルシウム血症

低マグネシウム血症の症状

テタニー症状
テタニー症状の図  画像引用:https://knowledge.nurse-senka.jp/206902/
  1. 神経筋症状:テタニー、痙攣
  2. 心電図異常:心室性不整脈の出現、wideQRS、テント状T波QT延長

心室性不整脈ではトルサード・ド・ポアンツ出現のリスクがあるため注意してモニター監視を行う必要があります。

トルサード・ド・ポアンツとは?

VT(心室頻拍)の中でもVF(心室細動)に移行しやすい危険な不整脈です。詳しいことは別の記事で説明しているのでそちらを参照してください。

→VT(心室頻拍)とは?

低マグネシウム血症の治療

硫酸マグネシウムの投与を行いますが腎不全患者はマグネシウムの腎排泄が遅いため、高マグネシウムになるリスクがあるため投与量を半分にして行います。

高マグネシウム血症について

高マグネシウム血症が増悪すると意識レベルの低下低血圧呼吸抑制が生じ、血中マグネシウム濃度が15㎎/dlを上回ると心停止するリスクがあります

心電図波形異常ではPR、QT延長、wideQRS、P波の消失、完全房室ブロックがみられます。

カリウムとマグネシウムの関係性とは?

  1. 低Mg血症の患者の40~60%は低K血症を合併する
  2. 低K血症の患者の50%は低Mg血症を合併する。

上記の通りカリウム、マグネシウムどちらかが欠乏していると、もう一方も約50%の確率で欠乏しているというデーターがあります。このことからカリウムとマグネシウムは密接に関係していることがわかります。

腎臓でのマグネシウムの働き

腎臓で尿を作る際に再吸収を繰り返す過程の中で、マグネシウムはROMK(K⁺チャネル)と結合することで、カリウムが排泄されるのを阻害する役割があります。しかし、細胞内のマグネシウムが欠乏することで尿中のカリウムの排泄量が増加します。

そのためマグネシウムが欠乏しているとカリウムも欠乏している場合が多く、反対にカリウムが欠乏しているとマグネシウムが欠乏している場合が多くなります。

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