VT(心室頻拍)|心電図の特徴や発見時の対応について解説!
VT(心室頻拍)は突然死に至ることがある危険な不整脈です。このサイトでは心電図が苦手な人にもわかりやすい波形の読み方の解説、VTを見つけたときの対応、治療方法などを解説していきます。
VT(心室頻拍)とは?
心室期外収縮(PVC)が3回以上連続して発生し、心拍数が100回/分以上となる頻脈を心室頻拍といいます。突然死に至ることがある危険な不整脈です。
持続する時間により持続性心室頻拍(30秒以上)と、非持続性心室頻拍(30秒未満)に分類されます。持続する時間が長くなるほど心臓のポンプ機能は低下し、心拍出量が低下します。それによりアダムス・ストークス症候群や心不全を引き起こします。
VT(心室頻拍)波形のポイント!
①幅広いQRS波が連続する
②P波がみえない
③心拍数が100回/分以上
多形性心室頻拍と多形性心室頻拍の違い
①単形性心室頻拍
心電図波形が単一で規則正しいQRS波が特徴です。心室内で発生したリエントリーが原因として考えられています。
②多形性心室頻拍
多形性心室頻拍はいくつかの異なる伝導路が原因として考えられています。そのためQRS波は連続的に変化し、RR間隔が不規則なのが特徴です。自然と停止することもありますが、VF(心室細動)に移行するリスクがあるため危険な単形性心室頻拍に比べると危険な不整脈です。
多形性心室頻拍の場合はQT延長を伴っているかが重要なポイントになります。QT延長を伴うトルサード・ド・ポアンツ型の場合はVF(心室細動)に移行するリスクが高く突然死の原因となりうる最も危険なVT(心室頻拍)です。
QT延長を伴わず、心疾患が背景にある場合は虚血、心不全、ショックなどの心機能低下にともなっておこる場合が多いと考えられています。また心疾患がない場合はブルガタ症候群、カテコラミン誘発多発性心室頻拍の可能性も考えられます。
VT(心室頻拍)を見つけたときの対応
すぐに医師に報告します。その次に意識状態の確認、脈の有無を確認します。意識がある場合は12誘導心電図を記録したうえで抗不整脈による薬物療法がおこなわれます。
意識レベルが低下し、脈が触れない場合は緊急性が高いです。胸骨圧迫を開始し、AEDなどによる電気的除細動を実施します。
VT(心室頻拍)の治療とは?
- 薬物療法
房室結節の伝導を抑える薬物としてカルシウムチャンネル遮断薬、β(ベータ)遮断薬、ジギタリス、ATP製剤などがあります。 - 非薬物療法
緊急性が高い場合や薬物が効きにくい場合は電気的除細動を実施します。また根治治療としてカテーテル・アブレーションや植込み型除細動器(ICD)などがあります。
VT(心室頻拍)と間違えやすい波形
①偽性心室頻拍
偽性心室頻拍とはWPW症候群とAF(心室細動)が合併した時に生じる不整脈です。鑑別のポイントとしてVT(心室頻拍)はRR間隔が規則的ですが、偽性心室頻拍はAF(心房細動)なのでRR間隔が不規則です。
偽性心室頻拍もVF(心室細動)に移行するリスクが高いため突然死の原因となりうる不整脈です。すぐに医師に報告して電気的除細動の準備を行います。
②AIVR(促進性心室固有調律)
AIVR(促進性心室固有調律)は心筋梗塞などにより、心筋に障害を負うことにより生じる不整脈です。心筋が障害されると障害された心筋の周囲が興奮状態となります。興奮状態になった心筋はその部位の自動能が亢進します。その興奮した自動能が洞結節の自動能のスピードを上回ったことで出現する不整脈です。
~鑑別のポイント~
①幅広いQRS波が60~100回/分の速さで出現します。
②P波を確認することができるのも大きな特徴です。ただし、心室で自動能が亢進しているため洞結節からの刺激(P波)とは関係なく心室が収縮しているためP波とQRS波の動きは連動していません。
AIVR(促進性心室固有調律)は循環動態に大きな問題がなければ対応の必要はありません。自然に元の波形に戻る可能性が高いです。波形出現時は一応Drに報告はしておきましょう。
③PSVT(発作性上室頻拍)
VT(心室頻拍)とPSVT(発作性上室頻拍)ともにRR間隔が規則的で突然発症する頻脈です。鑑別のポイントとしてQRS波に着目します。PSVT(発作性上室頻拍)はQRS波の幅が正常なのに対してVT(心室頻拍)はQRS波の幅が広くなるのが特徴です。
④AFL(心房粗動)
1:1のAFL(心房粗動)はP波がQRS波の中に埋もれてしまうため、心室頻拍との鑑別が難しくなります。鑑別のポイントとして基線が鋸歯状波(きしじょうは)になっているか確認します。特に波形変化する前のベースにAFL(心房粗動)がある場合はVT(心室頻拍)ではなく1:1のAFL(心房粗動)の可能性を考える必要があります。
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