補充調律|房室接合部調律と心室補充調律の心電図の特徴とは?
ペースメーカー機能の働き
補充調律が行われる部位はペースメーカー細胞の働きによって決まります。本来は洞房結節から電気信号が伝わるようになっていますが、電気信号が何らかの障害により途絶えると洞房結節→房室結節→心室の順にペースメーカー細胞が働きます。
ペースメーカー細胞は自身が発生する電気信号より速い電気信号を認識すると、電気信号を発生させるのをやめてしまう性質を持っています。
補充調律とは?
本来であれば洞房結節から電気刺激が発生し心臓の収縮が始まりますが洞不全症候群や房室ブロックなどによって心室の興奮を認めない場合、補充するように一定の電気活動が生じる働きを補充調律といいます。
一般的には房室接合部調律と心室補充調律の2種類が代表的な補充調律と言われています。
1、房室接合部調律
房室接合部調律の場合は房室接合部から電気刺激が発生し心臓の収縮が行われます。心拍数は40~60回/分で経過することが多いですが、60~100回/分の頻脈になる場合があります。これを促進性房室接合部調律といいます。
房室接合部には田原結節という自動性に富んだ組織があり、洞結節からの興奮が遅れると田原結節から自動的興奮が出て心臓を収縮させます。
房室接合部調律は洞結節以外の場所から発生した調律のため異所性調律に分類されます。
房室接合部調律の波形のポイント
- P波がQRS波に埋没して確認できない
- もしくはQRS波の前後に逆行性P波が確認できる場合がある
- QRS幅は狭くRR間隔は一定
促進房室接合部調律とは?
房室接合部調律は心拍数は40~60回/分で経過しますが、60~100回/分の頻脈になる場合は促進性房室接合部調律といいます。
促進房室接合部調律は房室接合部自動能が亢進した状態で洞結節の興奮頻度と接合部調律の出現頻度がほぼ等しく、QRS波がP波を追い越すことでP波が消失、もしくはQRS波に埋没して認められません。
促進房室接合部調律の波形のポイント
- QRS波は正常で規則的に出現しているが先行するP波が認められない
- 先行するP波が消失した部位のQRS波の形が変化する
2、心室補充調律とは?
心室補充調律は洞房結節からの興奮が遅れると心室からでる自動能によって心臓を収縮させます。ただし、心拍数は20~40回/分と非常に不安定で容易に補充調律が途切れることもあります。
また完全房室ブロックに伴っている場合は失神や心停止になるリスクが高いため速やかに対処する必要があります。
心室補充調律は洞結節以外の場所から発生した調律のため異所性調律に分類されます。
心室補充調律の波形のポイント
- 幅の広いQRS波
- P波は確認できない場合が多い
心室補充調律と心室期外収縮(PVC)の鑑別方法は?
どちらも心室由来の不整脈であるため似たような波形になりますが心室補充調律は徐脈性不整脈に分類され、心室期外収縮(PVC)は頻脈性不整脈に分類されます。そのため治療方法が真逆になるため鑑別が必要になります。鑑別方法としてRR間隔に着目します。
鑑別方法として心室補充調律は洞房結節から来るべき電気刺激が来ないことにより発生するため、RR間隔の延長を認めた後に心室補充調律が出現します。
心室期外収縮では洞房結節からの電気刺激が正常であるにも関わらず、心室で電気刺激が出現し本来収縮するよりも早く収縮するため、RR間隔の短縮を認めた後に心房期外収縮が出現します。
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