冠動脈の解剖生理とAHA分類の簡単な覚え方
冠動脈の解剖生理
冠動脈とは心臓に酸素やエネルギーを供給するための血管です。
大動脈の基部にある少し膨らんだ部分をバルサルバ洞といい、その左右には冠動脈がつながっています。それぞれ左側につながっているのを左冠動脈、右側につながっているのを右冠動脈といいます。
さらに左冠動脈は途中で2つに分かれており、前下行枝や回旋枝が左心室や左心房に血液を送っています。
冠動脈を番号で分類(AHA分類)
AHA分類とは?
AHA分類とは1975年に米国心臓協会(American Heart Association:AHA)から発表されたもので右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)の2本の血管の各部位を#1~#15の番号で分類したものになります。
右冠動脈(RCA):#1~#4
#1 右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した近位部
#2 右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した遠位部
#3 右冠動脈鋭縁部から後下行枝まで
#4 後下行枝(poster descending branch: PD)から房室結節枝(atrio ventricular branch: AV)が分岐する
左冠動脈(LCA):#5
#5 左主幹部
左前下行枝(LAD):#6~#10
#6 左主幹部から左前下行枝の第一中隔枝まで
#7 第一中隔から第二対角枝(#10)まで
#8 第二対角枝から左前下行枝末梢まで
#9 第一対角枝
#10 第二対角枝
左回旋枝(LCX):#11~#15
#11 左主幹部から左回旋枝(鈍角枝まで)
#12 鈍角枝
#13 鈍角枝から後側壁枝まで
#14 後側壁枝
#15 後下行枝
AHA分類の簡単な覚え方
1、血管の各部位(#1~#15)を手で覚える
血管の各部位を#1~#15の覚え方は右手で4、左手で5を作ります。
右手の4は右冠動脈(RCA)が#1~4までということを表します。
左手の5は左側は5から始まり5の倍数で分かれるということを表します。
- 右冠動脈 #1~4 (右は4まで)
- 左冠動脈 #5 (左は5から始まる)
- 左前下行枝 #6~10 (5の倍数で分かれる)
- 左回旋枝 #11~15(5の倍数で終了)
2、遠くにいくほど番号が大きくなる
AHA分類では大動脈に近い方が小さい番号で遠い方が大きい番号という決まりがあります。
そのため番号の振り付けに悩んだ際は手前から順に番号を振っていくと間違いありません。
さらに番号を振る際のコツとして分岐点は無視して番号を振るということがあげられます。
一旦はいま数字を振っている血管の分岐点は無視して先端まで番号を振ってしまいます。
大きな分岐点は2週目の際に番号を振るという風に覚えておけば間違いないです。
3、分岐点は語呂合わせで覚える
苦(9)渋(10)の決断 13、14、15
分岐点に関しては語呂合わせが一番覚えやすいと思います。分岐する場所は#9、#10、#13、#14、#15の5つあります。この5つで作った語呂合わせが「苦渋の決断 13、14、15」となりました。
13、14、15は数字そのままじゃないか!という意見もあるかと思いますがここにも覚えやすい仕掛けがあります。前半の#9、#10を苦渋という語呂にして後半は数字にしたことで差別化がうまれます。
この差別化で左前行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)を区別することが可能になりました。
前半の語呂で覚えた苦渋(#9、#10)は左前行枝(LAD)
後半の数字で覚えた13、14、15は左回旋枝(LCX)という風になります。
狭窄度のAHA分類
心筋梗塞などにより冠動脈に有意狭窄が疑われる場合に確定診断のために冠動脈造影を行い、通常は75%以上の狭窄を有意狭窄と判定し治療対象となります。
有意狭窄の病変に対してはそのままカテーテル治療へと進みます。
0% | 狭窄なし |
25% | 25%以下の狭窄 |
50% | 25%超から50%以下の狭窄 |
75% | 50%超から75%以下の狭窄 |
90% | 75%超から90%以下の狭窄 |
99% | 90%超から99%以下の狭窄 |
100% | 完全狭窄 |
冠動脈の灌流領域
右冠動脈(RCA) :右心室、左心室下壁、中隔の一部
左前下行枝(LAD):左心室前壁、中隔の一部
左回旋枝(LCX) :左心室後壁、左心室側壁
心臓は左室が収縮することで全身に血液を送るため左室収縮力が非常に大切です。そのため左冠動脈(LCA)の支配領域は大切になりますが、その中でも左室の半分以上を占める左前下行枝(LAD)は最も大切になります。
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