PVC(心室期外収縮)の心電図の特徴や発見時の対応について解説
PVC(心室期外収縮)は健康な人にも出現すると言われており、臨床現場でも多くみられる不整脈です。ただし、重症度に応じて治療が必要になる場合もあります。
このサイトでは心電図が苦手な人にもわかりやすい波形の読み方の解説、PVCを見つけた時の対応について解説していきます。
PVC(心室期外収縮)とは?
基本の心周期より早いタイミングで心室から興奮が出現し、心室が収縮する不整脈です。心房の収縮を待たずに心室が興奮するため、ほとんどの場合P波を伴わないQRS波が出現します。また心室内への刺激が本来のルートから伝わらないため、心室全体に伝わるのに時間がかかってしまうことからQRS波の幅は広くなります。
24時間で1発も出現しない人はほとんどいないといわれるほど、多くみられる不整脈です。基本的には健康診断で発見されますが、「脈が飛ぶ」「脈が乱れる」などの自覚症状で救急外来を受診する人もいます。
PVC(心室期外収縮)の原因
心筋梗塞、心不全などの心疾患が背景に隠れていることがあります。また不整脈や心疾患の治療のために処方された薬剤や、低酸素血症、低カリウム血症の合併症などもPVC(心室期外収縮)の原因となります。
PVC(心室期外収縮)波形のポイント
①P波は確認できないことが多い
②正常より早いタイミングで、幅広いQRS波(0.12秒以上)が あらわれる
③T波はQRS波と逆向きにあらわれる
④PVC後の心拍はほとんどの場合1拍休む(代償性休止)
PVC(心室期外収縮)観察のポイント
1、出現頻度
①散発性
PVCが1分間に1回未満、または1時間に29回以下
②頻発性
PVCが1分間に1回以上、または1時間に30回以上
③連発
2連発 → VT・VFに移行する確率:1%
3連発 → VT・VFに移行する確率:5%
30秒以上 → VT・VFに移行する確率:10%
2、形
①単源性…心室の1か所から興奮が出現したPVC
興奮が1か所から出現しているため波形は同じ形のPVCが出現します。
②多源性…心室の複数箇所から興奮が出現したPVC
興奮が複数箇所から出現しているため波形は違う形のPVCが出現します。
3、R on T型
PVC(心室期外収縮)が先行するT波に重なった場合をさします。T波は心室筋の再分極相で不安定な時期です。心室の興奮が冷めきらない間に、他からの刺激が伝わり心筋の興奮が高まる結果、VT・VFに移行するリスクが高くなります。
「RonTからVTに移行した波形」
PVC(心室期外収縮)を見つけたときの対応
健康な人でも1日の間で何回か出現する不整脈のため、基礎疾患がなく自覚症状がない場合は治療の必要がありません。
ただし、重症度の高い期外収縮はVT(心室頻拍)やVF(心室細動)に移行しやすいので放置してはいけません。重症度の分類にはラウン分類が利用されます。少なくとも3度以上のPVC(心室期外収縮)が見つかった場合は速やかに医師に報告が必要になります。
PVCの重症度 | ラウン(Lown)分類 |
---|---|
1度 | 散発する単一のPVC (1時間に29回以下) |
2度 | 頻発するPVC (1分間に1回以上、または1時間に30回以上) |
3度 | 多源性PVC (形の違うPVCが2つ以上出現する) |
4度a | 連発性PVC (PVCが続けて2つ出現する) |
4度b | 連発性PVC (PVCが続けて3つ以上出現する) |
5度 | 早期性PVC (R on Tが出現する) |
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コメント
コメント失礼します。とても分かりやすい解説で仕事をこなしながら復習も兼ねて閲覧させていただいております。
さて、本題ですが医療用語について質問です。「下降脚」とはどういう意味でしょうか。調べても出てこないので教えて頂けたら幸いです。
コメントありがとうございます。T波の頂点を境に半分に分けた際に上昇している部分と下降している部分の2つに分けることができます。下行脚はこのT波の下降している部分を表現した言葉でしたが確かにわかりずらいですね。ご指摘ありがとうございます!もっとわかりやすい表現に修正したいと思います。