心膜炎の心電図の特徴と心筋梗塞との鑑別方法について
心膜炎とは?
心膜炎とは心膜および心膜腔に炎症が生じる疾患です。
心膜とは心臓の周りを覆っている心嚢と漿膜性心膜を合わせた2枚の膜からなります。そしてこの2枚の膜の間には狭い隙間が空いており、その空間は心膜腔と呼ばれており心臓が動く際の摩擦を軽減させるため通常は少量の心嚢液が貯留しています。しかし、心膜炎になると心膜腔に過剰な心膜液が貯留し発熱、胸痛などの症状が出現します。
心膜炎は大きく分けて2つに分類され突然発症した場合を急性心膜炎、6カ月以上にわたって症状が継続している場合を慢性心膜炎と呼んでいます。
原因
心膜に感染が起こる原因としてウイルス感染が最も多いといわれています。その他結核や細菌、真菌などの感染をはじめ、外傷や関節リウマチなどの膠原病、自己免疫疾患、腎不全なども炎症の引き金となる場合があります。
症状
軽症の場合
- 風邪症状(喉の痛み、咳、発熱)
- 嘔吐、下痢
- 胸痛
重症の場合
- 心タンポナーデ、心筋炎、心不全などの合併症
- ショック状態(血圧低下、意識障害など)
心膜炎の心電図のポイント
- aVRを除く広域でのST上昇
- 上に凹型のST上昇
- PQの低下(上図の矢印の部分)
- V6のSTの高さがT波の高さの25%以上
急性心筋梗塞との鑑別方法
広域でのST上昇
心筋梗塞では部分的に障害された部位のST上昇を認めるのに対して、心膜炎では心臓全体を包みこむ心膜に炎症が起こるため広域なST上昇を伴います。
またミラーイメージ(相反性ST下降)が認められないのも大きな特徴です。
PQの下降
心房も心膜で覆われているため、心膜炎では心房の心筋細胞も障害を受けるためPQが下降するといわれています。
STの形で鑑別
急性心筋梗塞の場合は上に凸型のST上昇なのに対して、急性心膜炎の場合は上に凹型のST上昇を認めます。また心膜炎の場合は心筋梗塞と違い心筋が大きなダメージを受けていないため異常Q波は出現しません。
V6のSTの高さがT波の高さの25%以上
実はV6のSTの高さがT波の高さの25%以上だとほぼ心膜炎だと判断できるという文献もあります。
参考文献
1)Ginzton LE, et al. The differential diagnosis of acute pericarditis from the normal variant : new electrocardiographic criteria. Circulation. 1982 ; 65(5) : 1004-9.
早期再分極との鑑別方法
早期再分極も上に凹型のST上昇を認めます。どちらも冠動脈支配領域に一致しないST上昇ですが鑑別の方法として早期再分極はV3~V6もしくはⅡ,Ⅲ,aVFでのST上昇が多いと言われています。
その他の鑑別方法としては心膜炎ではPQ低下を認めますが、早期再分極ではPQ低下は認めません。またV6のSTの高さがT波の高さの25%以上だった場合は心膜炎と判断できる大きな好材料となります。
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