偽性心室頻拍(pseudo VT)にジギタリスが禁忌の理由とは?
WPW症候群とは?
WPW症候群とは本来の刺激伝導路とは別の副伝導路(ケント束)をもつ先天性異常です。
WPW症候群の多くは無症状で異常がなく、不整脈の既往がない場合は治療の必要がありません。
偽性心室頻拍とは?
偽性心室頻拍とはWPW症候群に心房細動(AF)が合併した時に生じる不整脈です。
心室頻拍(VT)と間違えやすい波形で鑑別が必要です。鑑別のポイントとして心室頻拍はRR間隔が一定ですが、偽性心室頻拍は心房細動なのでRR間隔が不規則だということが挙げられます。
偽性心室頻拍も心室細動(VF)に移行するリスクが高く突然死の原因となるため、すぐに医師に報告する必要があります。
偽性心室頻拍にジギタリスが禁忌の理由とは?
偽性心室頻拍にジギタリスが禁忌な理由には房室結節の役割が関係しています。
房室結節では心房から心室へ電気刺激を伝える役割に加え、心房から心室へ過剰な電気刺激をフィルターとして抑える役割があります。
通常の心房細動(AF)であれば内服薬でフィルターの役割を強化し、心房から心室へ流れる電気刺激を抑えることで頻脈を改善します。
しかし、偽性心室頻拍(WPW症候群に心房細動(AF)を合併した場合)ではケント束という迂回路が存在するため、房室結節のフィルターを強化して頻脈を抑えようとすると副伝導路から流れる電気刺激が増えるため逆効果となります。
むしろ心房内で発生している毎分300~500回の異常なリエントリー(電気旋回)が直接心室へ流れるため、心室細動(VF)に移行するリスクが高くなります。
ジギタリスの他にも禁忌な薬剤とは?
上記の理由から偽性心室頻拍では原則として房室結節に作用する薬剤は禁忌となります。禁忌薬剤の種類としてジギタリスの他にカルシウム拮抗薬、β遮断薬などが挙げられます。
偽性心室頻拍の治療方法とは?
薬剤治療としてはNaチャネル遮断薬(シベンゾリン、プロカインアミド、ジンピラミド)が推奨されています。また血行動態が悪い場合は直ちに同期カルディオバージョンの治療を行う必要があります。
発作が頻発する場合や失神の既往がある場合はカテーテルアブレーションにより、副伝導路を切断する根治治療の実施を考慮する必要があります。
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