PSVT(発作性上室頻拍)|心電図の特徴や発見時の対応とは?

PSVT(発作性上室頻拍)|心電図の特徴や発見時の対応とは?

PSVT(発作性上室頻拍)とは緊急度は高くないですが、動悸や胸部不快を伴う不整脈です。このサイトでは心電図が苦手な人にもわかりやすい波形の読み方の解説、PSVTを見つけた時の対応、治療方法について解説していきます。

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PSVT(発作性上室頻拍)とは?

PSVTとは心房と心室の間で電気信号がぐるぐる回り始める興奮旋回(リエントリー)で突然脈が速くなり、しばらく続いた後に急に停止する頻脈です。発作的に起こり、突然停止するところが洞性頻脈とは異なります。自覚症状は突然始まる動悸が多く、息切れや、胸苦の症状もみられます。危険度は低い心電図波形です。

PSVT(発作性上室頻拍)波形のポイント!

画像引用:http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/pm/ecg06.html

①QRS波の幅が狭い
②RR間隔は規則的
P波は確認できないことが多い。もしくは逆行性のP波(P´波)が現れる

PSVT(発作性上室頻拍)の分類について

PSVTはリエントリーのルートによって、いくつかの種類にわけることができます。房室リエントリー性頻拍房室結節リエントリー性頻拍などが代表的なPSVTの種類です。そのほかにも心房内リエントリー性頻拍洞結節リエントリー性頻拍などがあります。

リエントリーの原因として房室結節内が90%以上を占めています(期外収縮が誘因)。次いで副伝導路(ケント束…WPW症候群)が多くなります。

1、房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)

房室結節リエントリー性頻拍とは房室結節内には2つのルートが存在しており、心房と心室それぞれに電気刺激を伝えてしまい頻脈を発生させる状態です。
心電図上では、電気刺激が心房と心室それぞれに伝わるため、P波とQRS波がほぼ同時にあらわれ、P波はQRS波の中に埋もれてしまいます

稀有型ではT波の頂点辺りに逆行性P波を認めます

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の波形のポイント
  1. P波はQRS波に埋没する
画像引用:http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/pm/ecg06.html
房室結節でリエントリーが発生するメカニズ

房室結節内の2つのルートとは速伝導路遅伝導路の2つを指します。普段は電気刺激を伝達する時は速伝導路を使用していますが、速伝導路が電気刺激に反応できない不応期の時や心房期外収縮(PAC)が起きた際は、遅伝導路を通って心室へ刺激が伝導されます。

この時に速伝導路の不応期が終了すると、速伝導路は逆行可能なため遅伝導路からの刺激を受けて心房へ電気刺激を伝導させてしまいます。これにより、房室結節内を2つの伝導路がぐるぐるとエントリーする状態となります。

2、房室リエントリー性頻拍(AVRT)

房室リエントリー性頻拍は心房と心室を直結する副伝導路ケント束が存在するWPW症候群の患者にみられる波形です。

心房→房室結節→ヒス束→心室→ケント束→心房の順で電気刺激がぐるぐる回ります。そのため心電図上ではQRS波のあとに逆行性のP波(P´波)が現れデルタ波は確認できなくなります。

※QRS波のあとにあわられる形の変化したP波を「逆行性(陰性)P波」と呼び「P´波」と記します。

房室リエントリー性頻拍(AVRT)の波形のポイント
  1. 逆行性P波が出現する
  2. デルタ波は確認できない
画像引用:http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/pm/ecg06.html
ケント束でリエントリーが発生するメカニズム

普段、WPW症候群ではケント束経由で心房から心室へ電気刺激を伝導しています(この電気刺激の流れがデルタ波として現れます)。しかし、ケント束が不応期のときに期外収縮が起きると、ケント束では電気刺激を伝えることができないため、房室結節を通って心室に電気刺激が伝えられます

心室に伝わった電気刺激が不応期を終了し電気刺激伝導が可能となったケント束に到達すると、電気刺激が逆行し心室→心房の流れでリエントリーが発生します。

PSVT(発作性上室頻拍)の症状

  1. めまい
  2. 動悸
  3. 胸部不快
  4. 血圧低下
  5. 意識障害
  6. 心不全

心拍数が上がることによるめまい、動悸、胸部不快などの自覚症状が出現します。また頻脈による心拍出量の低下により、血圧低下や意識レベルの低下などが現れる場合があります。

また頻脈が長時間続くと心機能が低下して心不全の状態になることがあります。

PSVT(発作性上室頻拍)を見つけた時の対応

緊急性が高い状態ではないためおおむね予後は良好です。

まずはバイタルサイン測定を実施します。その次に可能であれば、確実な診断を付けるために12誘導心電図を記録します。

PSVT(発作性上室頻拍)の治療とは?

短時間で止まることが多いため自覚症状がない場合は特に治療の必要はありません


ただし、症状がなくても長時間続く場合は心不全を引き起こすリスクがあるため治療の検討を行います。 発作が20分以上続くと治療を受けることが勧められます。

治療は息こらえ、冷たい水を飲む(迷走神経刺激法)などは安全ですぐに行える対応です。

~迷走神経を刺激する方法の紹介~
・吸気時に息をこらえる
・深呼吸をする
・冷水に顔をつける
・冷たい水を飲む

薬剤を用いる場合は抗不整脈を点滴でゆっくり投与するのが一般的ですが、抗不整脈が効かない時はカルディオバージョンの実施を検討します。根治的にはカテーテルを用いて回路の一部を焼くアブレーションという治療を実施します。

カルディオバージョンとは?

カルディオバージョンとは心房または心室から発生する不整脈に対して用いられます。

胸壁を介してDCショックを加えると、心筋全体を脱分極させることができ、反復する脱分極に対して心臓全体が一瞬不応になります。その後最も早いペースメーカー組織(洞房結節)により心拍のリズムが再開されその人が持つ本来の波形へ戻ります。

とくにリエントリーに起因する頻脈性不整脈に有効だといわれています。

カテーテルアブレーションとは?

画像引用:https://www.jll.co.jp/patient/catheter_ablation3.html

カテーテルアブレーションとは不整脈を起こす原因となっている異常な電気興奮の発生箇所を焼き切る治療法です。

手技はカテーテルという直径2㎜程度の管を、鼠径部(大腿静脈)から心臓に挿入して行います。時間が2~4時間ほどで体に負担がかからないように局所麻酔や静脈麻酔で行われます。

PAT(発作性心房性頻拍)と発作性上室性頻拍(PSVT)の違い

心房頻拍(PAT)は房室結節より上で発生する不整脈を指します。これに対して房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は房室接合部付近で発生する不整脈を指します。

この両者を区別するためにはP波の形、P波とQRS波の時間間隔などを確認する必要がありますが、実際に頻脈になった場合は判別困難となります。

そこで両者に共通した特徴としてQRS波の幅が変わらず正常幅を示している場合は、心房性と房室接合部制の両方をひとまとめにして上室性という分類を使用します。

アイキャッチ画像:Creativeart – jp.freepik.com によって作成された background 写真

コメント

  1. わかりやすい解説ありがとうございます。心電図検定の勉強としてとても参考になりました。

    • コメントありがとうございます。心電図検定合格できることを祈っています。

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