カリウムの電解質異常で起こるの心電図変化の特徴とは?
正常なT波はゆるやかな陽性波ですが、電解質の異常によりより高く鋭角的な波形や平坦なT波なることがあります。電解質異常による心電図変化の中から今回はテント状T波、平低T波について心電図が苦手な人にも、わかりやすく解説していきたいと思います。
電解質異常が心電図に与えるとは?
電解質は体内にあるミネラルのことを指します。体内にはナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどさまざまな電解質が存在しています。
体内の電解質には適切な濃度が決まっており、増えすぎても減りすぎても生命活動に影響を及ぼし体調不良が生じます。通常は腎臓を中心に電解質の適切な濃度を維持していますが、腎臓機能の低下(腎不全)やホルモン異常などで電解質の濃度に異常をきたすことがあります。
電解質異常の中で心電図に影響が大きく、日常的に問題となる代表的な電解質としてカリウム(K)、カルシウム(Ca)が挙げられます。
今回はT波に波形変化が生じるカリウム(K)について焦点を当てて解説していきたいと思います。
高カリウム血症とは?
高カリウム血症とは血性カリウムが5.5mEq/Lより高い数値の場合を指します。腎不全や外傷・熱傷などにより生じる場合が多い。
高カリウム血症では心筋の興奮からの回復時間が短くなるため、QT間隔が短縮するとともに、特徴的なテント状T波が出現します。
高カリウム血症の症状
- 筋力低下
- 四肢の痺れ
- 嘔気
高カリウム血症の波形のポイント
- テント状T波の出現
- P波の消失
- QRS波の幅が広い
テント状T波の特徴は左右対称で鋭く尖った12mv以上の高さがあるT波です。カリウム濃度がさらに増加すると、心臓内での電気信号の伝達が悪くなり、心房での伝達障害が生じP波が小さくなり、消失する場合もあります。
また心室内の伝導障害を反映してQRS波の幅が広くなることがあります。
高カリウム血症の治療
高カリウム血症は短時間のうちに致命的な事態に陥る可能性があるため、モニター心電図を装着し慎重な経過観察が必要です。カリウム値が7.0~8.0mEq/Lを超えると心室細動をはじめとする致死性不整脈が出現するリスクが高くなります。
治療は心電図上でテント状T波を認める段階ではカリウム制限、利尿促進を行います。さらにP波の消失、QRS波の延長を認める段階ではカルシウム剤、重炭酸ナトリウムの投与、G-I療法(ブドウ糖-インスリン療法)を行いつつ透析の導入を検討します。
また高カリウム血症では心臓ないでの電気信号の伝導が悪くなり徐脈になる場合があります。幅広いQRS波の徐脈から心停止に至ることがあり、時にはペーシングが必要になる場合があります。
低カリウム血症とは?
低カリウム血症とは血性カリウムが3.5mEq/Lより低い数値の状態を指します。嘔吐や下痢など大量にカリウムが失われたときにおこります。また利尿剤などの薬剤が原因で低カリウム血症となる場合もあります。
低カリウム血症ではQT間隔の延長、T波の平坦化(平低T波)、陰性化が出現します。QT間隔の延長はトルサード・ド・ポアンツや心室細動などの重症不整脈を誘発し、死に至るリスクがあるため注意が必要です。
低カリウム血症の症状
- 血圧の上昇
- 疲労感
- 筋力の低下
- 不安感
低カリウム血症の波形のポイント
- QT間隔の延長(QT延長)
- T波の平坦化(平低T波)
低カリウム血症の治療
低カリウム血症の治療はカリウム製剤を投与して補充していく必要があります。軽症であれば経口からカリウム製剤を投与します。重症で不整脈を呈する場合には塩化カリウム20~40mEq/Lを5%ブドウ糖液に溶解してゆっくり点滴で投与します。
その際、カリウム補正中に一過性の房室ブロックや心室細動が生じる危険性があるため、カリウムの静注投与時にはモニター心電図による監視が必須となります。
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