アーチファクトとは?|心電図に混入するノイズの種類と解決法を紹介
アーチファクトとは心電図に混入するノイズのことを指します。
心電図を正しく正確に読み取るためにはアーチファクトと不整脈を見分けて、アーチファクトを解決する方法を知っておかなければいけません。このページではアーチファクトの種類と解決方法について解説していきます。
アーチファクトとは?
アーチファクトとは日本語に直訳すると「人工産物」という意味になり、心電図に混入するノイズのことを指します。モニター上に実際とは違う波形があらわれたり、本来の波形が歪んでしまいます。心房細動(AF)や心室頻拍(VT)などの不整脈と見間違えやすいため注意が必要です。
またアーチファクトの種類は大きく分けて2種類に分類されます。
1、人為的なアーチファクト
1つ目は皮膚抵抗、呼吸、筋肉の動き、不安や緊張などが影響する人為的なアーチファクトです。部屋の温度を調整し、筋電図を拾っている場合は力を抜いてもらったり、姿勢を変更することで解消します。
また電極の張り方にもポイントがあります。12誘導心電図の場合は電極は肋間に貼りますが、モニター心電図の場合は骨の上に電極を貼ります。そうすることで電極が安定し筋電図の混入が少なくなると言われています。
1、物理的なアーチファクト
2つ目はペースメーカーなどの医療機器によるノイズ、ベッド周囲の電磁波の混入といった物理的なアーチファクトです。原因を探索し、場合によってはリード線を交換したり、電極をつけ直すなどして解消します。
代表的なアーチファクトとは?
今回は臨床現場でみられる代表的なアーチファクトを6つ紹介していきたいと思います。
- ノイズ
- 基線の動揺(ドリフト)
- 交流障害(ハム)
- 接触不良
- 電波障害
- 筋電図
①ノイズ
代表的なノイズは歯磨きVTです。短い周期に規則的な体動があるとモニター上に心室頻拍(VT)に似た波形が現れます。
<原因>
・体動
<対策>
・波形変化がみられたら患者の様子を観察する
②基線の動揺(ドリフト)
基線の動揺(ドリフト)とは基線がゆっくり呼吸にそって変動するアーチファクトです。
<原因>
・大きい呼吸
・電極とペースト(接着剤)の間に発生する分極電圧の差
・衣服が電極に触れている
<対策>
・電極に衣服がかからないようにする
・汗をかいている場合は清拭を行う
③交流障害(ハム)
交流障害とは心電図に電灯線や電源から電流や電磁波などが混入することで、規則正しい基線の揺れが認められるアートファクトです。大別して静電誘導、電磁誘導、漏れ電流の3つの原因に分けられます。
1、静電誘導
<原因>
空気を介して電灯線と患者の間に浮遊容量が形成され、それを通じて交流障害が生じます。
<対策>
・電灯線から患者の距離を離す
・必要のない電子機器はコードをすべて電源コンセントから抜く
・シールドシート(鉄製の物)を被せる
2、電磁誘導
<原因>
電線の中を電流が流れるとその周りに磁力線が発生します。磁力線が電極リードと交差すると電磁誘導が生じます。
<対策>
・場所を移動してみる
・電極リード線を束ねる
・リード線の位置を変えてみる
・患者の周囲でできるだけ電気機器を使用しない
3、漏れ電流
<原因>
壁、天井、床などを伝わって漏れた電流が交わることで生じます。
<対策>
・心電図のアース線を確実に取り付ける
・使わないものは電源を切るだけでなく、コンセントから抜く
・患者とベッドの間にシールドシートを入れる
・ベッドの足をゴム製の皿で包み絶縁状態にする
④接触不良
接触不良とは電極が剥がれた、もしくは剥がれかけたことによるアーチファクトです。心室細動(VF)に似た波形が観察されます。まずは患者のそばにいき容態が悪化していないか観察します。問題がなければ電極やリード線の状態を観察しましょう。
<原因>
・皮膚が汗などで湿潤していたり、乾燥している場合
<対策>
・状態を確認し、電極を装着し直す
・必要に応じて皮膚の保清を行ってから再度電極を装着する
⑤電波障害
<原因>
・電波が届かない位置にいる
・電池切れ
<対策>
・電波の届く範囲で行動する
・電池交換
⑥筋電図
筋電図は基線に不規則なギザギザした波形が認められます。
<原因>
・寒さや緊張による身体の震え
<対策>
・寒さにより震えている場合は部屋を温かくします
・緊張による場合はリラックスできる環境を整えます
・電極を筋肉の動きが少ない場所に張り直す(骨の上など)
アイコンキャッチ画像:Vectorpouch – jp.freepik.com によって作成された light ベクトル
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